アリオスはアンジェリークの半身を起こさせる。向かい合いに 座らせブラウスのボタンに手をかけた。 片手で、ゆっくりと。 一つはアンジェリークの羞恥心を煽るため。 もう一つは、露になるアンジェリークを充分に眺めたいため。 アリオスの意図を悟っているのか、アンジェリークは恥ずかし そうに視線を逸らせて頬を染めてる。 ――引き千切らなかっただけでもよかったぜ…。 よく見るとこのブラウスも、少しずつ現れる下着も初めて目に するもので。 「…新しい服か?」 「え? あ、う…うん」 「…そうか」 アンジェリークはアンジェリークなりに心積もりをしていたと、 思い至る。それを踏みにじった形にしてしまったことが、苦い。 だけど、それを謝ると、またアンジェリークが悲しむから。 「…似合ってるぜ」 今まであまり見なかった、すこしシャープなラインのデザイン だが、柔らかな光沢のある淡いピンクの布地で、今のアンジェリーク によく似合っている。 「ホントに?」 「ああ…」 見上げたアンジェリークに頷いてやると、それは嬉しそうに微笑 んだ。 「だからゆっくり脱がせてやる」 「なっ! も、もうっ」 ぱっと変わった顔色に、アリオスの咽がククッと鳴った。
可笑しそうに肩を揺らすアリオスを、もうっとばかりに睨んで いたが、ふいっとアンジェリークは腕を伸ばして、アリオスのシャツ のボタンに手をかけた。 アリオスがのぞき込むと、恥ずかしそうな顔はしてるが、ダメ? とばかりに小首を傾げた。 ダメなわけがない。いや、嬉しい。 「……サンキュ」 アリオスの礼の言葉に、ううん…と首をふったので、さらさらっ と栗色の髪が音を奏でた。
「ほら、腕上げろ」 「はい……。あ、アリオスも両手上げて?」 「こうか?」 クスクスと笑いあい、時に小さくキスしあいながら、互いに互い を脱がせあう。 そうして二人して全裸になって。
「こいよ、アンジェ…」 腕を広げたアリオスに、 「…うん」 はにかみつつ頷いて、アンジェリークは抱きついた。 素肌が合わさる感覚は、どうしてこんなに心地よいのか? 手の中にある暖かさ、これだけで、もう何もいらないと思えてし まう。 柔らかな唇を訪えば、素直に受け入れてくれる。 舌を絡めると応えてくれる。 ――俺のアンジェがここにいる…。 僅かに口を離して見つめると、そっと見上げる青緑の瞳。 「アリオス…大好き…」 言葉で伝えてくれるアンジェリークに、アリオスは笑って 「愛してるぜ、アンジェ」 と耳に囁いた。 背中をアリオスに預ける形で座って、彼に包み込まれる。 アリオスは、今度はとてもゆっくりと、まるで手触りを楽しむか のように肌を大きな手で包む。 背中をうなじを脇を胸を。 彼の体温と息遣いを背に感じて、胸がきゅう…と締めつけられる。 「こんな風に…」 「うん?…」 くもぐった声はアリオスが顔を埋めてる首筋から。 銀の髪が自分の栗色の髪に混じって揺れている。 「…アリオスに…背中からだっこされるのって…安心できる……」 何故だか上ずってしまう声に応えるように、アリオスは前に回した 腕で、もっと引き寄せてくれて、 「そうか…」 と言うと 「俺も、おまえを包み込めるから気に入ってるぜ」 と、耳朶のくぼみに唇を寄せた。 前に廻った大きな手がやわやわと胸に触れる。まるで確かめるか のように下からそっと持ち上げ、包み込んだ指でゆっくりと撫でる。 その優しい柔らかな愛撫に、逆に強く反応してしまう――躰が、 心が――。 「あ…んん……」 ため息のような声を落とし、その甘さに自分で自分に戸惑う。 「…声、がまんなんかするなよ?」 と、今度は背筋にそって唇が落ちて、そのまま辿りながら、アリ オスの低い声が響く。 「聴かせろよ、おまえの声。俺は聴きたい…」
くるりとアンジェリークを回して向かい合い、すぐに腕に閉じこ める。膝立ちにさせて、目の前に揺れる胸に唇をよせると、アンジェ リークが熱いため息を溢した。 両手を背中に回して、気まぐれに背中や腰のライン、ヒップの 丸みを手のひらで味わい。 口の中の粒をころころと舌で転がして遊ぶ。 「…アリオスッ! ああっ…んっ」 稚魚のように跳ねる躰を、背中に回した手で制して、 「やっぱりこっちも悪くねぇな」 と咽奥で呟く。 腕の中で、アンジェリークがきゃう…と鳴いてのけぞった。
――本当に、こっちの方が断然いい…。 目を閉じ眉をよせ耐える表情。 さっきも似た顔を見せたけど、今、アンジェリークが耐えている のは――快楽。 白い肌に赤く散る痕。かなりきつく吸ってしまったので、鬱血の 痕が点々と残る。 ――痛かっただろうな…。 その上から癒すようにそっと唇を押し付け微かに咽を動かす。 ほんのりと染まる肌。数分後には消えてしまうだろう。 ――それで構わねぇ…。 またすぐにつけるから。 アンジェリークを抱えたままで、するするっとベットの端へと 移動し、アリオスは床へと躰を降ろす。 躰が離れてしまったことで、アンジェリークが目を開け問うよう に見上げた。 ――………いい顔、してんな。 煙るように濡れる青緑の瞳。薄く染まった頬。微かに開いた唇。 本当に綺麗だ。 だからもっと綺麗な顔を見たい。 「アリオス?」 表情だけでなく問い声を出したアンジェリークの頬にちょっと口 付け、アリオスはアンジェリークの正面に廻って腰を落とした。 「いいだろ?」 すんなりと伸びる脚に手をかけ、仰ぎ見てねだる。 「おまえの全部を見てぇんだ」
「アリオス…」 いつも上にあるアリオスの顔が、今は下にあって。 銀の髪の向こうから金と緑の瞳がまっすぐに見つめる。 いいだろ? とねだる声は、アンジェリークだけが聴く彼の声。 だから、逆らえない。 逆らいたくない――。 薄く頬を染めつつ、アンジェリークは頷いて、アリオスの手に 導かれるまま、脚を左右に大きく拡げた。 ――綺麗だ…。 手を伸ばしかけ、思い直して、そっとそっと軽く触れる。 外側の花弁を抑えて拡げると、繊細な薄桃色の花弁がつややかな 蜜に濡れて覗いた。 小さく覗く蕾が本当に可愛らしい。 「綺麗だ…」 思わずもらした感嘆の声に、アンジェリークが恥じらって身を すくめる。 「恥ずかしい…」 と、小さな声で訴える。 ――可愛いな…。 アリオスは一つ笑むと、その花に唇を寄せた。 花弁の縁に沿ってゆっくりと舌を辿らせ、唇だけで軽く銜えて、 舌先で奥の溝を突く。硬くなる蕾を包み込んで転がすように舐ると、 泉の奥からわき出る蜜。 「ああ…んんっ……ふ…くっ……ぅん……」 手に支えたアンジェリークの太ももが細かく震えている。 頭をまさぐる小さな手の存在が嬉しい。 もっと引き寄せて欲しくて、口の中の蕾をちゅっと吸うと、 「ああっ!!」 と、アンジェリークが背を反らして腰を揺らした。
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